第一話

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「彩澪さんもだけど、人間は手先が器用だから仕上がりが良いわ。人間と獣人がこんな仲良くできるのはこの『(けい)(きゅう)』くらいね」 「全種族平等の中立国は珍しいですからね」  三つの種族は仲が良いとは言い難い。  まず人間は誰とでも集団生活ができるしそれが当然だけど、獣人は種族ごとで固まる。食生活や好む環境が違うので同族以外との集団生活ができないのだ。最も特殊なのは有翼人だ。人間でありながら獣の羽を持つ彼らは絶対数が少なく、その生態は謎に包まれている。  必ずしも敵意を持っているわけではないけれど、生態の違いから受け入れられない場合が多いのだ。  結局どの国も種族で固まってしまい、特定の種族で人口のほとんどを占めることになる。そうなるとそこの環境に適さない種族は生活が苦しくなり不平等を強いられることになってしまうのだ。 「聞いた? 南区だったかな。『有翼人保護区』ができるんだって」 「そうなの? 『獣人保護区』の有翼人版?」 「そう! すごく偉い有翼人が協力したんだって! きっと有翼人も増えるわね」  この『保護区』が蛍宮の全種族平等を叶えたものだ。森や洞窟など様々な地形があり、各生態に適した生活を送ることができる。  人間はどこでも構わないので特別な区画はないが、特に困らないので気にもならない。  獣人と有翼人の大変さは分からないけど、人間は一番楽なのよねきっと。  そうしてしばらくお喋りをして彼女は帰り、私も工房へ戻った。すると、工房にはまた違う人物の姿があった。
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