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第九話
そこからどうやって移動したかは覚えていない。けれど気が付いたらとても豪華な部屋にいた。さっきの朝会殿とやらに比べれば圧倒的に狭いけれど、皇太子殿下と立珂ちゃん、薄珂ちゃんと私、それと侍女が一人と殿下の護衛らしき武官の五人が入ってもあまりある広さだ。
ここだけで私の工房よりも広いわ……
「座ってくれ。美星、茶の用意を」
「承知いたしました」
「い、いいえ! とんでもありません! まさか立珂様が高貴な方とは知らず、どうぞお許しください!」
まさか宮廷で、それも皇太子殿下にもてなされるなんて一般庶民としては許されないだろう。
私はとにかく頭を下げることに必死だった。
「う!? どうしたの!? 誰も怒ってないよ!」
「俺たちは高貴じゃないよ。森で拾われただけだから」
「そうなの! 高貴じゃないの! だから起きて!」
「し、しかし」
「気にしなくていい。この子らに友や同士ができるのは私としても嬉しいことだ。それにこの羽根糸と生地は本当に素晴らしい。これなら愛憐皇女もさぞお喜びになるだろう」
「愛憐皇女?」
「極北明恭の第一皇女だ。立珂の友でもある」
「皇女……」
明恭とは世界の最北に位置する極寒の国だ。
凍死するほど寒い国の皇女様……
ふいに立珂様の言葉が思い出された。
『うん! お姫様にあげるの!』
お姫様とは皇女だ。
お姫様って本当にお姫様なの!?
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