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父王の亡骸が帰ってきた。傍らには折れた剣。私はこの国一番の鍛冶師を呼び、それを修復するよう命じる。氷結の丘に咲く冷晶花の粉末に、地の果てに住まう竜の息吹、そして、次にこの剣を振るう者の――私の、血。それらを混ぜ合わせた秘薬を剣に浴びせかけ、鍛冶師は鎚を振るう。その間、吟遊詩人たちが歌う。父の偉業を称える頌歌を。敵国への呪詛を。こうして鍛え直された剣が献上された。
「血と歌にさらされた剣は、呪いにも似た強大な力を持つと言われていますが……」
「愚問だ」
そう言って、私は剣を取る。いつかこの剣も再び折れ、己が肉体は朽ちるだろう。それでも心は折れない。姫――いや、王女たる私の、復讐と再興の物語を始めよう。
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