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沈んだ感情を引き摺るように教室を出た僕は、ため息をつきながら廊下を歩く。
5月の末端という事もあって、外はまだ明るい。
とは言え、日差しの向きによっては暗くなる場所もあり、今僕が歩いている廊下は薄れて見えない程には暗かった。
これも影に含まれるなら、彼女の影を踏むなんて造作も無いのにな。
そう思案しながら廊下を歩いていると、突然廊下の電灯が光り、薄れていた影が明確な闇を映し出す。
「……なんだ?」
何故唐突に電灯が……。一体誰がつけたんだ?
不思議に思い、ふと視線を前に向けると、廊下に立っている二人の男子生徒が、何故か僕を睨みつけていた。
感情の無い、人形のような瞳。
僕の能力とは違った影響を受けていそうな、不気味な視線に、自然と歩く速度が上がる。
早く帰ろう──そう思い、通り過ぎようとした瞬間、一人の男子生徒から腕を掴まれ、動きを止められる。
咄嗟の出来事に声を出せずにいると、もう一人の男子生徒がスマホのライトで僕の足を照らし始めた。
……何だ? 何故僕がやらなかった作戦を実行しているんだ?
錯綜する感情の波に呑まれそうになりながら、周囲を確認する。すると、僕の背後に──
天上明里が立っていた。
「なッ……!?」
そして彼女はライトによって照らされ、伸長する僕の影を踏もうと足をあげる。
──僕はそのタイミングで、掴まれた腕を振り解いて全力で走り出す。
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