2人が本棚に入れています
本棚に追加
【……だからという訳ではありませんが、景文くん。出来ればもう、私に関わらないでくれませんか?】
「……え?」
【気味が悪いんです。あなたも私と同じ能力を有しているのならわかるでしょう? 掌握できない人が近くにいるのは、それだけでストレスです。言う事を聞かないし、何を考えているのかわからない。はっきり言って気持ち悪いんです】
酷く冷めた口調で語る彼女に、僕の体は硬直し、動こうにも動けなかった。
ショックを受けた……のではなく。彼女の発言が真意とは思えなかったからだ。
【……そういう事ですので。どこに隠れているのか知りませんけど、見つけ次第、校内から閉め出します。来週以降、声をかけようとも、影を踏もうともしないで下さいね。……では】
プツンと。彼女がただひたすらに語るだけの校内放送が終わる。
外の様子を見ると、先ほどより人の数が増えている。
これだけの数だ。廊下を出た瞬間、捕まる可能性が高い。……だけど。
「……天上明里。それが君の本当の望みなのか?」
気味が悪い、気持ち悪い。それらの主張は本音かもしれない。
だったら正面切って言えばいいんだ。ストレートに言われた方が、僕は傷付く。
けど彼女はそれをしなかった。優しさ故かと思ったけど、だとしたらこんな事をする訳がない。
となると。彼女がこんな事を実行したのには別の理由があって、それは恐らく僕なら理解できる話の筈だ。
「確かめることも出来ず、話しかける事も出来ず。なのに来週から関わるなだと?」
──なら、今週中はセーフだな。
極論づけた僕は、外でゾンビのように犇く雑踏をかき分けて、天上明里の元へと駆け出した。
最初のコメントを投稿しよう!