【カケルモノ】

7/8
前へ
/17ページ
次へ
「──やはりここにいたんだな。天上明里」  肩で息をしながら屋上の扉を開く。  フェンスの側に立つ彼女が、月明かりに照らされながら振り向いた。  彼女は、何故僕がここにいるのかわからない様子で此方を見つめ、落胆と安堵が含まれた声色で尋ねてくる。 「何故ここがわかったんですか?」 「カンだ」 「……適当な事を言う人は嫌いです」  突き刺すような眼差しを向けられ、少し気落ちする。適当って訳でも無いんだがな。  ……正直に言えば、このカンは外れて欲しかったけど。そうならなかったのならもう、後には引けないな。 「適当なんかじゃない。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。それだけだ」 「なっ……」  何故それをって顔をしているな。あまり僕を見くびるなよ? 伊達にこんなふざけた能力を有して生きてない。 「友達も家族も、影を踏むだけで掌握下に置いてしまう力。心から話し合える相手なんかとうの昔にいなくなった。()()()()()。だから君は確かめようとしたんじゃないか? 僕も君と同じ力を有しているのか、そして掌握の外にいる存在なのかを」 「……」 「けど君は確かめるのが怖くて、逃げて。人を使ってこんな回りくどい事をした。もし自分の勘違いで僕が普通の人間だとしたら、君の淡い希望が消えてしまうしな。……ここまで言っておいて何だが、面倒な女だな君は」 「面倒!?」  僕の発言に怒り心頭と言った様子の彼女は、顔を真っ赤にして詰め寄ってくる。僕はそんな彼女の肩を掴み、一気に引き寄せた。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加