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「──やはりここにいたんだな。天上明里」
肩で息をしながら屋上の扉を開く。
フェンスの側に立つ彼女が、月明かりに照らされながら振り向いた。
彼女は、何故僕がここにいるのかわからない様子で此方を見つめ、落胆と安堵が含まれた声色で尋ねてくる。
「何故ここがわかったんですか?」
「カンだ」
「……適当な事を言う人は嫌いです」
突き刺すような眼差しを向けられ、少し気落ちする。適当って訳でも無いんだがな。
……正直に言えば、このカンは外れて欲しかったけど。そうならなかったのならもう、後には引けないな。
「適当なんかじゃない。死のうとしている君を止める為にここへ来た。それだけだ」
「なっ……」
何故それをって顔をしているな。あまり僕を見くびるなよ? 伊達にこんなふざけた能力を有して生きてない。
「友達も家族も、影を踏むだけで掌握下に置いてしまう力。心から話し合える相手なんかとうの昔にいなくなった。僕も同じだ。だから君は確かめようとしたんじゃないか? 僕も君と同じ力を本当に有しているのか、そして掌握の外にいる存在なのかを」
「……」
「けど君は確かめるのが怖くて、逃げて。人を使ってこんな回りくどい事をした。もし自分の勘違いで僕が普通の人間だとしたら、君の淡い希望が消えてしまうしな。……ここまで言っておいて何だが、面倒な女だな君は」
「面倒!?」
僕の発言に怒り心頭と言った様子の彼女は、顔を真っ赤にして詰め寄ってくる。僕はそんな彼女の肩を掴み、一気に引き寄せた。
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