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「なっ、何をするんですか!?」
「うるさい。こうまでしないと信じないだろ、君は」
互いの影が重なり合う距離感。
雲に隠れていた月が顔を覗かせ、屋上に佇む僕らを照らし出す。
「……一応、君の淡い希望は叶った訳だけど。それでもまだ死にたいって思うか?」
「……どうでしょうね。結局のところ、この能力のせいで孤独な事には変わりませんし」
月に目を向けて、悲しげに呟く彼女。確かに、どこまでいってもこの能力と付き合っていかなきゃいけないし、孤独感はついて回る。
けどな、天上明里。残念な事に君は孤独じゃない。
「──だったら。その孤独感を、僕に埋めさせてくれないか?」
「え?」
小っ恥ずかしい台詞だと思う。けどここまで来たらもう、色んな意味で止まれない。
「好きだ。付き合ってくれ」
「……え!? なっ、はぁ!?」
手を掴んだまま、僕はストレートに想いをぶつける。
告白された彼女は顔を赤くしてあたふたしている。その姿が面白くて、つい笑ってしまった。
……天上明里。僕も同じって言うのは、本当にそのままの意味で。僕もこの能力のせいで何度も死のうと考えていたんだ。
けど君の存在が「死」を薄れさせた。影踏みの力で掌握できない君がいたから、僕は夢中になって君を追いかけて来たんだ。
多分だけど、君がいなければ先に死んでいたのは僕の方かもしれない。
だから、死のうとしていたところ悪いけど、この手を離す訳にはいかない。
どこまでも自分勝手な主張ではあるけれど、僕は。
「君となら生きていける気がするんだ」
そう言って笑う僕を、彼女は突き放す事もなく、黙って受け入れてくれた。
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