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この女、僕が教室の扉付近で待機している事をわかってたな? だから先に高橋さんと佐藤先生を教室に入らせたんだ。
その事に気付いて歯噛みする僕に、天上明里は侮蔑の意を含ませる声色で言葉をかけてきた。
「おはよう暗井くん。今日は随分とお早い登校なのね。いつもは遅刻ギリギリを攻めて来ているのに。一体どうしたというのかしら?」
「……なに、大したことじゃない。ただ少し早く目が覚めて、早く学校に来た。それだけだ」
もはや捨て台詞のソレだが、これ以上交わす言葉は無いと判断した僕は、天上明里に顔を向ける事なく席へつき、机の上で突っ伏して寝たフリをする。
……くそっ! 失敗した、今日もまた失敗した!
そう考えただけで、脳みそが短絡しそうな程に熱を持ち、今にも焼き切れそうだった。
だが、このまま悔しがっているばかりじゃ時間の無駄だ。どうにかして彼女の影を踏み、天上明里を掌握下に置かなければ。
「あら? せっかく早く学校に来たというのにふて寝? それなら遅刻ギリギリまで寝てた方がよっぽど有意義だったんじゃない?」
「うるさい。放っておいてくれ」
耳を塞ぐように、腕全体で頭を覆い顔を隠す。狙いが外れて計画が失敗し、挙げ句煽られて、言い返す事も出来ず……。
こんな状態で、誰が平然と顔をあげられようか。穴があったら入りたいどころか、そのまま身を埋めて死んでやりたいくらいだ。
けれど、そんな事を言っていられないのも事実で、僕は何としてでも彼女の影を踏む必要があった。
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