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僕がこの能力──影踏みに目覚めたのは、小学校3年生くらいの事だ。
普通の「影踏み」に参加させられ、僕が鬼として皆を追いかけている時に、その力の存在に気付いた。
影を踏んだ相手の瞳が闇に染まり、その場で立ち尽くす。踏んで回った後に全員が僕を見つめている光景は、ある種の宗教を彷彿とさせた。
何故この能力に目覚めたのか。16歳になった今でもわかっていない。
推測だが、当時の僕は虐められており、誰にも相談できずに一人で抱え込んでいた事がある。
その時に抱え込んだ心の闇が、能力の発現に関係している……気がしていた。
影には鬼が宿るという言い伝えがあるけど、もしかしたら僕の心の弱さに免じて、鬼が力を与えてくれたのかもしれない。
ありがた迷惑だなと、幼かった僕は存在するかもわからない鬼に対して強い怒りを感じたのを覚えている。
「──とは言え、この力無しでは彼女とまともに話す機会さえ与えられないのは事実か」
時刻は16時30分。
すっかり人がいなくなった教室の中、僕は机の上にノートを広げ、これからの事について考えていた。
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