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それは明らかに、一人や二人じゃない。どう見ても、五十人か百人を超えそうなほどの人たちが、僕のほうへ向かって一目散に走ってきているのだ。
よく状況が呑み込めないが、僕の身に危険が迫っているような気がして仕方ない。
僕はとっさに、足音とは反対の方向へと駆けだした。
たくさんの足音は、僕が逃げ出したことで、そのスピードをさらに速めた。
背後から大量のドタドタという足音が迫ってくる中、僕はあぜ道を走り出す。
やっぱり足音の主たちは、この僕を追いかけているみたいだ。
なぜ僕は追われているのだろう?
あの足音の主たちは何者なのか?
そして、ここはどこ?
それもわからないまま、僕は足音に追いつかれないよう、必死に走り続けた。
だんだんと息が切れ、着ているシャツが汗だくになってきたが、僕を追ってくる足音はまだ続いている。
足音の中の一つが、僕の背後間近まで迫ってきていた。かなり走りなれているようで、足音のリズムが短距離走の選手のそれによく似ている。
それでも僕は追いつかれまいと全力で走りながら、一度だけ後ろをさっと振り返ってみた。
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