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三メートルほどの距離までに迫っている、その足音の主は、とても奇妙な格好をしていた。
黒いマントを羽織り、顔には中世の仮面舞踏会でつけるような、真っ白い仮面をつけている。
なんだ、こいつは?
なぜ、こんな格好をして僕を追いかけているんだ?
マントの隙間から見える体格からすると、どうやら若い男らしい。二メートルぐらいまで僕に近づいているその男は、僕のほうに向かって両腕を伸ばしている。
それは僕をなんとか捕まえてやろうとしているように見えた。
理由は一切不明だが、絶対に捕まってはいけない……という気がする。
僕は、さらに足に力をこめ、深く呼吸をしながら走り続けた。
どこまで走っても、まっすぐなあぜ道が続いている。やはり、ここは都会から相当離れた田舎町なのだろう。
僕は追われる理由も、今いる場所もわからないまま、とにかく走った。
全力で走ったおかげで、先ほどの迫っていた男の足音も、かなり離れていくのがわかる。
だけど限界は近い……。心臓は息苦しさの域をすでに超えて痛み出しているし、両足も悲鳴をあげている。口の中に血の味が広がる。
少しでいい、少しでいいから休みたい。
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