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どこか隠れられる場所はないだろうか。僕はあぜ道の先に目をやった。
道の右側に黒々とした林のようなものが見えてくる。
そこで、あぜ道が途切れ、竹が生い茂っている場所があるのだ。
竹林だ……。
あそこなら少し休憩を取れるかもしれない。
僕はもう一度、後ろを振り返ってみた。
足音の主たちとは、もう十数メートルほどの距離がある。
今だ。今しかない……。
僕は竹林にさっと飛び込み、その場に身を伏せた。
すぐに足音の主たちが竹林のそばにやってきたので、僕は出来る限り音を立てないように、じっとしていた。
若い男たちらしい声が次々と聞こえてくる。
「おい、いないぞ」
「どこに消えたんだ。見失っちまったか?」
そっと男たちの様子を覗いてみた僕は、ぎょっとした。
六十人ほどいる彼らは全員が、先ほどの男と同じように、黒いマントと仮面を着用しているのだ。
「あいつ、一体どこへ消えたんだ」
「見通しのいい場所だから、隠れたのかもしれない」
その中の一人が、僕の隠れている竹林のほうを指さしながら言った。
「あの竹林が怪しいぞ。きっとあそこに隠れたに違いない」
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