雨と兄

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 いつ雨が入り込むか分からないからね。兄ちゃんは言う。だから窓を開けたらいけないし、玄関なんかは絶対に開けたらだめだ。たくさんの雨がたぁくんの身体に突き刺さって痛い思いをするからね。僕はこくりと頷いて、そんな僕の頬を兄ちゃんは撫でる。ゆったりと、笑いながら。兄ちゃんの笑みを見るたびに僕も笑う。伝染したかのように。  兄ちゃんが歩いてゆく。スーツというものを着た兄ちゃんのそのさまは颯爽としていて、僕もいつかあんなふうになるのかなと、窓の中から僕は思った。
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