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これはね、雨って言うんだよ。いつの日か、兄ちゃんは僕にそう言った。
当たったら死ぬ、とも。
窓には雨というものの細かな粒が大勢張り付いていて、その向こうに広がる外の世界というやつを僕はじっくりと観察した。道というものの脇に立つ、木というものを。傘というものを差して歩く、人というものを。
窓の外は恐ろしいんだ。僕の肩を抱き、共に窓の外を眺めながら兄ちゃんは言う。いつ雨が降ってくるか分からない、と。
僕の喉がこくりと鳴る。ふっと、兄ちゃんの笑った声が降りた。
ここにいれば安心だからね。そう言って兄ちゃんは僕の頭を撫でる。ゆったりと、丁寧に。
おまえは死ぬまでここにいるんだ。
兄ちゃんの声が耳元で揺れた。
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