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「それと、鬼はかつて修行という名目で、人とゲームをしていた。隠れ鬼というものだ」
それは単純で、鬼を捕まえるというだけのものらしい。そして、修行と称して、鬼が山の歩き方や、崖の登り方などを教える。
「昼は修行、夜はゲーム。そうやって、人を鍛えていた」
「天狗の面は?」
修行をしていた男は、主な目的として、子孫繁栄を願っていた。
「まあ、ストレートに言うと、立派に勃つ事が目的だった」
「それは、ストレートですね」
鬼もそこは理解して、且つ、共感していたという。
「鬼を追いかける。それはつまり、鬼のようになるという事。教え、学び、強くなる。それも、追いかけっこのようなもの。そして、ゴールにはこの神社。でも、人間界の神社は、本当に神社で、こんな場所ではない」
俺達の界に存在する神社は、ラブホではなく、本当に神殿になっているという。そして、修行の最後に、奥の滝で身を清め、神社に天狗の面を奉納して終了する。
「だがしかし、もう一つの隠れ鬼というものがあって…………」
「それが、匠深ですか?」
鬼との混血には、稀に鬼の血が濃く出てしまい、人の体が負けてしまう場合があるという。
「朽木は、ほぼ鬼ですよ」
「そう。体も頭脳も、力も…………全部に鬼の血が強く出ていれば、それは鬼で問題ない」
だが匠深のように、人の体に、鬼が混じったというような場合は、奇病や難病という状態になってしまうらしい。
「匠深は、成人までは生きられなかった…………それは自覚していたかと思う」
そこで、隠れ鬼というものが重要になってくるという。
「向こうに、人里のようなものが見えるだろおう。あれが、鬼の雌社会。鬼は、雄と雌が分かれて集団生活している」
そこで、問題となるのは、雄は年中盛っているが、雌は子作りの時にしか性交しないという事だ。
「鬼は、雌の方が強い。これは、分かり切った事で、体の大きさも大人と子供ほどに違う。雌は、三メートルから、四メートルの身長で、片手で米俵を数個掴んで運べる。だから、雌の許しがなくては、近付く事もできない」
迂闊に近付いてしまうと、山へ放り投げられてしまうらしい。
「大体、誰でも一回は、迂闊に近付いてぶん殴られて重傷になっている」
「…………怖いですね………………」
だから、鬼は人間と性交しようとするらしい。
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