第二十四章 夜に沈む森 四

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「ううむ…………匠深は、鬼になった。それは分かる」 「どちらかというと、嫁になった?」  ここで、人が鬼の嫁になるという事があるのかと質問すると、金太郎は少し考え込んでいた。 「朽木の家、お父さんは鬼だ。でも、鬼のこの村で、育てられない者」  この村で生まれても、鬼とは呼べない存在が、周期的に生まれてしまうものらしい。そういう時は、人里で育てて貰うという。 「俺の父親は、鬼では無理だったのですか?」 「そうだな………………とても小さくて、病弱だった。この気に合わない者といのは、時々、発生するものだから」  しかし、朽木の父親には商才があった。  こちら側の朽木旅館を経営しているのも、朽木の父親らしい。 「武郎さん、あ、朽木旅館の経営者で、そこの朽木の父親」 「親父は、鬼の場がある事を知っていたのですか…………自分の素性も…………」  武郎は、こちら側の朽木旅館から、俺達の界の朽木旅館に預けられた子供だったらしい。だが、武郎が嘘を付いていたわけではなく、こちら側の朽木旅館に置き去りにされた子供だったという。 「武郎さんは、自分の素性を知らなかった。でも、どちらの朽木旅館にも、恩義を感じていた。それと、武郎さんが持っていた物は、置き去りにされた時にあったものだ」  しかし、この金太郎の素性も分からない。  先ほどから、部屋には様々な差し入れがやってくる。そして、金太郎を見ては、顔を真っ赤にしていた。 「多分、匠深は逆のパターンで、こちらの気の方が合っていた」  しかし肉体が人間では、鬼の気は受け止められない。 「鬼の気、俺も朽木も、立哉も満腹以上に貰っていますが…………」 「普通は耐えられないレベルだな」  朽木は鬼の血が強いので、鬼よりも鬼らしい。そして、俺は竜王でこの界の主に近いので、何でもOKなのだと、金太郎は推測していた。 「竜王?水瀬が?」 「…………知らないで連れて来たのか……」  金太郎は、この場では異質で、まず全身の色が薄い。 「白に金は、天界に近いとされていて、この場の光だ。俺はこの場の光の元、ここは、本当は暗黒の場だ。水瀬も光に近いというのか…………むしろ、全て。だから極小のチビでも、竜王だろう」  だから、他の鬼達は金太郎に憧れ、大切にしているらしい。金太郎がいなければ、この場に光はない。 「金太郎は、光なのか…………」 「まあ、そこには理由がある」  鬼にも理があり、この場を形成するに至った。 「鬼は場に物を持って来られなかった。そこで、自分の能力に取り込んで、この場に持ってきた」
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