第二十四章 夜に沈む森 四

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 光と闇、そして土や作物。それらの物は、鬼が能力としてこの場に持ってきたものらしい。そして、ここに村を作った。 「匠深は、男でありながら、男にとっての嫁になれるという能力があった。そして、他の鬼も、そこに着目した」 「…………そこですか…………」  匠深が求めたものが何なのか分からないが、鬼に勝つと次の鬼になる。それが、隠れ鬼の一つのルールになっている。だから、匠深は鬼に勝って、鬼に成ろうとした。  だが、鬼を捕まえるというものではなく、鬼の秘宝とも呼べる面を見つけた。まずは、それが勝ちだったのか分からない。 「…………面は何だ?」 「それは、俺も分からない…………」  だが、鬼になって嫁になった匠深は、元の界に戻れなくなっていた。 「そもそも…………ここに社があるのは…………ここで、ある鬼が死に、気の渦が生まれたせいだ。これは気であって、皆の生命の源だから、止める事は出来ない。でも、強すぎる気は、鬼でも狂う」  鬼の伝承によると、鬼は様々な物を能力にして、この場に村を作った。土の鬼は、死してこの場の土になり、木の鬼は死して森になった。  そして、鬼はここに村を作った。  だが、鬼は人の生命力で生きていたので、人と離れてしまうと弱ってゆく。そこに、精の鬼が出現し、人の界から精を持って来る事に成功した。そして、その鬼が死んだ場所が、この社の場所らしい。そして気の渦が生まれた。その渦を制御しようと、社が建てられた。 「まあ、今になって思うと、この場ではなく、その鬼こそが、面になったのかもしれないな…………」  その鬼は、土を司る鬼が死して地になったように、精というのか、性の面になったのではないのかと、金太郎は推測した。そして、その面が天狗ではなく、女性的なものだったので、ここで精を汲み上げろと言ったのかもしれない。 「その鬼が、まあエロでね。この場で注挿して精を汲み取れ、そして生きろと言ったわけだ」 「注挿というのは、つまり、この場でヤレという事ですね」  そして、ここがラブホと化したという。 「だが、鬼の雌は淡泊だ。人間の女性を連れ込むには、自分でこの山道を登って来て貰わなくてはいけない。場を通るには、鬼ごっこで追ってきて貰わないといけないから……」  それが難しく、場が安定しなくなったので、鬼は雌の面を作り、その場に埋めたという説もあるようだ。 「まず、雌と呼ぶのを止めましょう。もっと、敬意を持って………………」
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