第二十五章 夜に沈む森 五

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 しかし、中央に布団があるという事は、これからここでするという事ではないだろうか。男は分かっていないようで、服を着たまま布団に転がり、そのまま爆睡していた。 「ゲームは夜だからな……眠いのだろう……」  そして、朽木が男の素性を調べると、男は大学を卒業したばかりの会社員だった。そして、ゲームには大学時代から参加していて、借金は数百万円にもなっていた。 「どうして、そんな金額になる?」  参加費が嵩んだとしても、そんな金額にはならないだろう。 「毎回参加し続けて、数年もやっていると、そうなる」 「そんなに参加しているのか…………」  借金があるので止められなくなり、増えると分かっていても、参加し続けてしまうらしい。  そして、両備に確認してみると、この男は鈴木 正賢という名前で、一流大学を卒業していた。そして、それなりの会社に就職した。周囲からは、品行方正と言われているので、借金の事を相談出来なかったのだろう。 「むしろ、素行が悪い者のほうが、そんなに嵌らない」 「そういうものか…………」  借金は隠れ鬼の運営にしているもので、闇金などではない。だから、隠れ鬼から逃げてしまえば、借金を踏み倒す事が出来る。  この鈴木という男も、隠れ鬼から逃げようとしていたという。だから、ゲームの最中に、この場に囚われてしまった。 「ルール違反をすると、場に囚われる?」 「罰則がある。でも、実際は、それが鬼の目的で、ここに来させる」  鬼を追いかける事が正解で、鬼から逃げようとすると、場から出られなくなってしまうらしい。そして、隠れ鬼のゲームから逃げようとした鈴木は、鬼に連れられてこの場に来た。 「朽木、こうやって、鬼の場に参加者を連れて来られたら、借金の焦げ付きが残らないか?」 「それがだ、そういう場合は、保険のようなものがあって、補填される」  だから鬼殿達も、失踪者を放置してしまっていた。 「ここに来ていたのか…………」  そしてやっと、どうして失踪するのか、原因が分かったらしい。 「まあ、彼等は二重の記憶を持っている。向こうに場が形成されれば、元の姿に戻りゲームの続きを始める。その時は、ここでの記憶はない。ゲームが終わると、ここでの生活に戻る」  壁に映った画像には、眠った鈴木の服を脱がし、鬼が背を舐め始めていた。金太郎によると、この舐めるという事は重要で、鬼にとってのマーキングも兼ねているらしい。 「兼ねている?」 「そう、この子は、ストローのようなもので、元の界に繋がっている。そして、ストローを吸って、精を得る」  汲み上げろといったのは、ここに来た人から精を搾取する事らしい。 「彼等は欲と精にまみれているが、自分でそれを搾取する事は出来ない。そして、自分の糧にする事も出来ない。 「鬼はまず、人の体から染み出てくる欲を舐め、自分のものにする。人は、欲を舐めとっても、中からじわじわと滲みだしてくる。これは、鬼にとっては、最高のスイーツのようなもの」  画面に映っている鬼も、鈴木の背中を舐めて、うっとりとした表情をしていた。そして、腿や手を舐めると、ねっとりと胸を舐め上げていた。その頃には、鈴木が目を覚まして、自分が全裸である事や、舐められている現状に気付いて逃げようとしていた。  しかし、鬼の腕力からは逃げられず、そのまま舐められ続けていた。
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