第二十章 天狗の子守歌 五

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『場自体が重なっているのか?』  俺も、そこがよく分かっていない。  界を渡って俺達はやって来たが、そこには境界という、どこの界にも属さない空間が存在している。この境界というものは、光も温度も、空気も何もない場所で、迷うと永遠に抜ける事ができない。  だから、界を渡るという事は命懸けで、界と界は離れて存在している。 「朝になったら、匠深がいた場所に行ってみます」  すると、立哉が山の地図を送ってきた。それはかなり細かいもので、現在の木々の様子や、岩の様子まで見る事が出来た。しかし、匠深がいたような、建物はどこにも無かった。 『匠深も朝には家に帰る。そうして、普通に生活する。これが日常なのだろう』 「鬼界というのは、存在するのでしょうか?」  そこで、振り出しの疑問に戻ってしまった。  すると、月森も安在も、鬼界というものには遭遇した事が無かった。 「悪魔とか、天国とかも無いものですか?」 『そういう界にも、行った事が無いな…………』  竜界があるのならば、鬼界というものがあってもいい。だが、どんな場所なのか、想像もつかない。 「情報無しですか…………」  鬼界の知識が無いので、迂闊には近寄れない。やはり、しっかりと昼間に現地を視察して来よう。 「ここに山竜がいるので、俺も少し眠っておこうかな…………」 『近くに鬼がいるぞ』  鬼は、物凄く近い場所で、爆睡しているのもいる。 「でも…………闇があるせいかな…………怖いという感じがしないのですよ」  それと、天狗の面で思い出したが、匠深が見つけたという面は、天狗ではなく能面のようなものだった。 「匠深は埋まっていた面を見つけた」  その面には、幾つかの疑問がある。  まず、何故、埋められていたのかだ。伝承通りだったとすると、強すぎたので埋められたという事になる。しかし、それならば、見つからない場所に埋めるだろう。そして、天狗ではなく能面だった事だ。  そして、この能面がゲームの開始だったと、匠深も考え、面を探している。 「面は、匠深の元には無かった」
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