第二十五章 夜に沈む森 五

7/7
57人が本棚に入れています
本棚に追加
/73ページ
「どこにいても、幸せでも、故郷に帰りたいと思う筈だよ。それは、特別な事ではない」  そして、教師も失踪していたが、それはいなくなった生徒を探して山に行き、鬼という伝承を見つけ探している内に、神社に入ってしまったという。 「先生もね。妻や子供がいるから、帰りたいと言っている。でもね…………ここで、鬼の精で生き始めると、もう人の輪には戻れない。そもそも、食事が違っている。人の場に戻ったら、すぐに飢えて死ぬ」  人は周囲の精や欲を集めるが、自分で吸収する事は出来ない。そして、一度、内蔵からの取り込みを行ってしまうと、もう細胞が元には戻らない。鬼に愛される体に、変わっていってしまうのだ。 「…………先生は俺の伴侶で…………帰りたいと聞く度に、俺も泣きたくなる」  金太郎は、だから俺達を隔離したのだという。ここで、誰かと交われば、元の場所には戻れなくなるからだ。 「そういう事か…………」 「もう、泣いて帰りたいと言う人を増やしたくない…………」  金太郎が、何故、俺達に関わってきたのか分かった気がする。
/73ページ

最初のコメントを投稿しよう!