第二十六章 悲しみの鬼

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「いや………………アレを出し入れ出来るというのが、単純に凄い」 「訓練すれば、どの人でも出来るようになる」  だが、そんな訓練はしたくない。それに、あんな風に改造されたくない。 「…………見たくないのに、つい見てしまう…………」 「見た事のない世界だからな…………」  あんあんと首を振って喘ぐ巻島は、もう画像の暴力のようにゴツイ。そして、がっしりとした腰が、家を壊す勢いでぶつかりあっていた。それは、格闘技のようにも見えるが、それを打ち消すように、巻島が喘いでいた。 「格闘技?」 「あれで、静かな方だと思うよ。鬼の場は、今が昼だから」  巻島は、顔を紅潮させ、喘ぎまくって腰を振っていた。その期待に応えるように、鬼は激しく巻島を抱いた。 「昼!昼に、アレをしているのか?」 「そうなるね」  金太郎は、笑いながら少し困ったような表情をした。 「……初めは、一ヵ月に一度、そして一週間に一度になり、毎日になる。そして、日に二回になり、三回と回数が増えてゆく。それだけの回数をこなしてゆかないと、倒れて意識が無くなってしまう」  ただの絶倫かと思っていたが、そんな事情があったらしい。 「…………そして、人は夜に溶けて消える…………………………」 「消える???」  人は鬼に抱かれ続け、やがて目覚めなくなる。そして、ある夜に突然、消えてしまうものらしい。 「……スーっと、消えてしまう…………」  金太郎も、最初の嫁の時に、驚いて探しまくったという。 「…………鬼は精を食らう……だから、皆、人の嫁を欲しがる。そして、伴侶と呼ぶ。でも、鬼は搾取しているだけではないのかと、思う時がある…………」  金太郎は幾人かの伴侶を経て、このシステムに疑問を抱いてしまったという。 「…………先生も、あんなゴリラになっているのか?」 「先生は成人してから来たので、あそこまでゴリラではないな…………でも、しっかり全身が筋肉で、尻は磨いて揉み込んでいるので。ピカピカのプリプリだ」  嫁の尻は、鬼の自慢の一つらしい。  そして、やはり巻島と同じように、三回の食事を必要とするようになっていた。 「人の時間で五年……ここでの時間は、もっと長いけどね……俺は、先生が消える時の事を考えたくない。だから、人の場に、戻したいとも思った」  しかし、それも、鬼の精で生き始めてしまった人は、口からでは栄養を取れなくなっているので無理だった。ここに存在している人にとっては、鬼に注がれる事こそが、メインの食事なのだ。 「人を伴侶にしないと、鬼は滅亡する。鬼にとっても、これは重要な行為だから……」 「匠深は…………………………」
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