第二十六章 悲しみの鬼

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 匠深は、鬼の界には住んでいない。しかし、鬼の影響を強く受けている。 「匠深君は、二日に一回程度ではないのかな。それに、人の場で生活している」  匠深だけではなく、鬼の界にいる全ての人を助けたいが、匠深は別物のような感じがしていた。 「どうして、匠深は人の場に戻れる?」 「それが、分からない」  金太郎も、愛する先生の為に、匠深を観察していたらしい。しかし、結果として何も分かっていなかった。 「互いに利害関係が一致している事は、分かってもらえたかな」 「そうだな。お互い、助けたい人がいる事は承知した」  そこで、このラブホから出て、金太郎の家に向かう事にした。 「匠深もここにいるのか…………」 「その、何というのか、匠深君は最初から特殊で、一対一の伴侶ではなく、数十人の夫を持つ。それだけの精を纏っていた」  そして、神社の最奥で、今も男と寝ているらしい。  俺は金太郎と部屋を出ると、まずは境内を回ってみた。すると、朽木は記憶の中の神社と比較し、建て増しがあると指摘していた。 「俺達が修復した時の神社は、こんなに部屋数が無かった」 「あれには驚いたよ。ここと重なる場というのは、固定が出来ない。それなのに、子供が場に同じ建造物を建てて繋げてしまった」  竜の姿のままだが、建築の専門家である立哉も、神社を検分すると、その間取りが建築法を無視していると言っていた。それは、奥にも部屋が続いているせいで、窓のない部屋や廊下なども存在していた。  そして、立哉は、どこが人の界の建物で、どこからが鬼の場なのか、俺に説明してくれた。 「あ。子供がいる」 「そうですね。子供でも、雄は七歳になると、母親から離されて、ここにやってきます」  しかし、ここはラブホなので、子供が来る場所ではない。 「ここは、来たらまずいだろう」  境内には、狭い庭があり、そこで子供の鬼が砂遊びをしていた。 「水が湧いている場所が、ここしかないので、水浴びに来たのでしょう」  神社の裏手には、洞窟があり湧き水があった。 「鬼は生涯に十人ほどの子供を産みます。その内、七割が雄です」  そして、雄に生まれると、七歳くらいで母親から離され、ここで共同生活に入る。 「朽木達も鬼だけど、それは、どういう扱いだ?」
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