第二十六章 悲しみの鬼

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「それは、人の場の鬼ですね。これは重要で、迫害はされません。鬼が分かれて存在する事で、場を繋いでいる。それがないと、鬼の場は離れていってしまう」  人の場に鬼が存在している事で、鬼の場は、境界に存在出来る。 「かなりの人数の失踪者がいたけれど、皆、ここに来ているのかな…………もしかして、ピンクのエプロン、バカ売れ?」 「そうですね、鬼の伴侶として、百人近くは人がいると思います」  巻島が使っていたような,ピンクのエプロンを愛用している人間が、ここには多く存在しているらしい。 「先生は、白の割烹着が好きですよ」 「全裸で着るのですか?」  金太郎の説明によると、鬼のエプロンは全裸に着るものらしい。そして、一番人気が、ピンクのフリルであった。 「…………どこで、あんなものが売っているのだろう…………」 「人の場に売っているらしいですよ」  どの店に売っているのだろう。  そして、神社を一周回ると、意外にも多くの人が、ここの部屋にも入っていると分かった。正確に数えていないが、ここに数十人はいただろう。 「かなり、失踪しているな……本当に百人いそうだ……」 「家出で処理されている者もいますから………………」  そして神社を一周すると、俺は鳥居を潜って金太郎の家に行こうとした。 「あれ?」  だが景色は全く異なり、鳥居の先は、夜の山に戻っていた。そこで、再び鳥居を潜ってみても、もう鬼の場に行かなかった。 「鬼を追いかけるという、条件をクリアしていないのか……」  俺は金太郎の家に行こうとしていたのだが、鳥居を潜った瞬間に、元の場に戻ってきてしまったようだ。 「朽木も戻ってきたのか…………」 「戻るつもりは無かったのに……戻っていますね」  周囲は夜になっていて、森の中まで静まり返っていた。そして、隣にいた朽木も、一瞬で景色が変わったので、驚いて鳥居を何度も潜っていた。 「…………もう、鬼の場に行かない」 「どういう仕組みだ?」  元の界に戻ってしまうと、鬼の場がどこにあったのか分からなくなっていた。そして、俺も鳥居を何度も潜ってみたが、鬼の場に行く事はなかった。
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