第二十六章 悲しみの鬼

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「車に帰るか…………」 「そうしますか…………」  しかし、時間を確認してみると、まだ一時間も経過していなかった。どうも、鬼の場は、この界と時間の流れが違っているらしい。そして、車に戻って中に入ると、すぐに電話が掛かってきた。 「月森さん?」 『佳樹。携帯電話の画像を繋がったままにしておいたから、鬼の場の中が見えたよ』  俺の携帯は服のポケットに入っていたのだがカメラの部分は外に出ていたようだ。そして、いつの間にか、通信のままになっていたらしい。 「もしかして、エロ鑑賞も流れてしまいましたか?」 『バッチリ』  その画像は、ハンザや目羅兄弟にも流れていた。 「目羅からだ…………巻島の現在が分かったとコメントしている」  それは、かなりショッキングだっただろう。かつての親友は、今は鬼の伴侶になり、毎晩どころか、日に三回ほど抱かれているのだ。そして、見た目がゴリラだ。  だが、目羅は巻島が幸せそうで良かったと言っていた。 「幸せで良かっただけで終われない…………気分だ」 「まあまあ…………偏見は捨てて」  ハンザも、鬼の場の存在が分かり、両備と分析しているとコメントが入っていた。きっと、俺の携帯が画像を送り続けていたのは、両備の仕業であろう 。  そして、朽木の兄にもデーターがいっていたらしく、戻って来いと電話が掛かってきていた。 「兄貴。朽木旅館に空き室はないだろう」 『俺の家に泊ればいいだろう!俺も、水瀬君に会って、話しがしたい!』  しかし、朽木の兄は新婚だ。新婚の家には絶対に行きたくないと思い断ると、妻は女将の修行で旅館にいると言ってきた。 『それと…………親父が鬼だと、薄々は分かっていた。ほら、親父は金の鬼だから…………そこに匠深が関係していたのは、不思議だ……』  朽木の父親は、金を稼ぐ事が上手だが、その分、金の使い道に煩い人らしい。 『でも、それよりも水瀬君だよ。どうして、鬼の場に行ける?』 「他の人も行けるようですよ。出られないだけで」  鬼の場は、行くのは簡単だが、ある意味、出る事は難しい。食事(精を吸収)をすると出られなくなるなど、おとぎ話の黄泉の国のようだ。 『水瀬君は。料理が上手で、可愛いのだろう?母さんが絶賛していた。佐久弥の嫁!ってね』 「でも、男ですよ」
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