第二十章 天狗の子守歌 五

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 だから、匠深は面を再現しようと、物を作り続けていた。 「匠深はパズルを作っていた」  これも、ヒントのような感じがする。  匠深は面を見つけ、次に気付いた時には、面が無くなっていた。そして、仲間の姿が見えなくなった。  そして、互いに姿が見える者と、見えない者が組み合わさり、一つの世界を構築している。 『水瀬、こっちもフォローしているから、分かった情報を流してこい』 「分かりました」  ここで通信を切り、眠ろうとすると、立哉との通信だけが残っていた。 「どうした?立哉」 『佳樹は、俺の宝珠だ……離れていても、俺達は一つだ』  それは分かっている。 「俺は、立哉を嫌っているわけではないよ。ただ、今は、頭を冷やして考えたいだけだ」  一緒に界を渡ってくれた最強の水竜を、俺が嫌いになる筈がない。それは、いつも自分の一部のように愛おしい。だが、その自分の一部だった存在が、急に一人の人間、一匹の竜になってしまったので、混乱してしまった面もある。 『俺は佳樹を守ろうとしただけだ……』 「それは分かっている。でも、ゴメン。今、物凄く眠い」  立哉と話していても、欠伸が止まらなくなっていた。これは話しに興味がないのではなく、本当に眠いのだ。 『分かった』  立哉との通信が切れると、俺はシートに横になった。すると、朽木が腕を伸ばしてきて俺を掴むと、布団のように自分の上に乗せた。これは、もしかして、寒くて無意識に取った行動かもしれない。  俺は後部座席に手を伸ばし、毛布を取ったが、朽木が離してくれないので、そのまま眠ってしまった。
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