第二十六章 悲しみの鬼

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 俺も、恋人と紹介されたわけではない。それに、ただの友人だ。 「水瀬君、もう夜は遅い。ここの二階、部屋があってね。そこに布団も用意したから、眠るかい?」  眠りたいのはやまやまだが、その前に風呂を借りたい。俺が自分の匂いを確認していると、幸助も察しが良いのか、すぐに風呂だと分かってくれた。 「そうか、旧館に露天風呂があって、この時間は閉めている。鍵を貰ってくるから、そこで、一緒に風呂に入ろう」 「一緒じゃなくていいです…………」  どうして、一緒に入らなくてはならないのだろう。俺は、風呂は一人で入りたい。 「それと、腹が減ってしまって…………キッチンをお借りできますか?」 「キッチン?何か食材はあるかな…………ここに、簡単なコンロと炊事場があるけど、そこは使ってもいいよ」  ここは、車庫だが休憩できる設備が揃っていた。そして、この車庫には風呂はあるが、かなり古く汚いので、露天に入ったほうがいいという。 「色々と…………話したい事もあって」  そして、幸助は朽木を睨むと、俺の肩を叩いていた。
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