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第二十七章 悲しみの鬼 二
風呂に入る為に、朽木旅館の旧館に入ると、そこはリニューアルされていて、本館よりも新しい感じがしていた。しかし、趣は古い旅館なので、そのギャップがいい。
「いい旅館ですね」
そして、何故か幸助も付いてきていた。
「まあ、古い旅館だ」
この旧館は、鬼の場からも見えていたので、繋がっている場所なのかもしれない。だから、朽木の父親の武郎は、リニューアルして残そうとしたと考えられる。
武郎は、人ではなく、鬼なのだ。鬼と繋がる場を残しておきたかっただろう。
「母さん、あ、大女将だけど、この旧館が好きだから…………親父は、ぶっ壊して遊歩道にしようとしていたけど」
「え?ここを残したのは、大女将なのですか……」
俺の予想は、かなり外れていた。
そして、露天風呂に到着すると、源泉かけ流しだったので、温かく保たれていた。そこで服を脱いで風呂場に行くと、立哉も隠れたまま付いてきていて、俺の体を洗っていた。
そして、朽木も入って来たが、幸助も入って来た。
「この旧館に、俺達も住んでいた。誰か住まないと家屋が朽ちるとか言われてさ…………その時は、幽霊屋敷みたいに、ボロボロだった」
その時は、朽木と幸助が住んでいたが、ほぼ毎日、目羅兄弟やハンザも来ていたらしい。しかも、両備などは、勝手に研究室を作っていたという。
「そう、それで、毎日、露天風呂に入っていたけれど…………野性味溢れていて、話しかけたら猿だったという時もあった」
朽木は猿に話しかけ、三十分程も気付かなかったらしい。
「鹿という時もあった」
「気付きましょうよ…………」
猿はともかく、鹿は気付いて欲しかった。しかし、朽木は細かい事は気にしないタイプだった。
この旅館の露天風呂は、どうやって鹿が来たのか分からないが、山の傾斜に沿って建てられていて、見晴が良さそうだった。今は夜になっているので、その見晴らしが分からないが、星空が綺麗に広がっていた。
「それで、鬼の場が、ここに存在しているのか?」
幸助にも鬼の場の映像が届いていたらしく、あまりにエロビデオだったので、隠れて見たと言っていた。どうも、金太郎が見せていた映像も、一緒に見てしまったらしい。
「金太郎は、俺達の祖先かな………………」
「そうかもな」
朽木と幸助は、互いに頷き合っているが、俺にはその理由が分からない。すると、幸助は、朽木旅館を最初に建てた人は、金太郎という名前だったと言った。
「金太郎は、鬼を追ってこの土地に来て、ここに定住した武士で、ここから消えてしまった」
「桃太郎ではなく?」
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