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すると金太郎も、昔は人だったのだろうか。
「金太郎は人だったかな?」
しかし、どう見ても、金太郎は鬼だった。
「多分、その頃は、鬼も人も、この場に共存していたのだと思うよ。だから、金太郎が人だったのではなく、鬼も住んでいたという方がしっくりくる」
金太郎には黒髪の美しい妻がいて、子供は五人ほどいた。そして、その末っ子が朽木旅館を継ぎ、現在に至る。
「他の四人は?」
「四人の姉と末っ子長男だった。四人は、様々な家に嫁いだ」
金太郎は不思議な人物で、物凄く強く、そして美しかったという。そして、この場所に温泉を見つけると、家を建てた。
「金太郎を慕って人が集まって来たが、金太郎自身は、村ではなく山に住むと言った」
そして、山の民として、人との交流をしていた。だが、人が山に行っても、金太郎の家に辿り着く事はなかった。
「匠深は、鬼の集落にいたのか…………」
「そうだな………………」
会話はのんびりとしているが、内容は深刻だ。
隠れ鬼というゲームだったので、鬼を捕まえれば終了になると思っていた。しかし、実際は鬼を捕まえると鬼になり、ゲームが継続されてゆく。
「匠深は鬼を捕まえて、鬼になりたかったのか?」
「確かに、鬼になる方法を、知っていたような気がする…………」
匠深は、人として生きていた場合は、既に寿命が尽きていた。そして、鬼になったので、元気に動けるようになった。
「だけどさ、匠深が鬼になっても、それは嫁のほうで、それはそれで長生き出来ない」
「鬼嫁は、ここにもいるけどな」
幸助は笑っているが、それを奥さんに聞かれたら不味いだろう。それに新婚だというのに、鬼嫁はない。
「兄貴、嫁の尻に敷かれているからな……」
幸助は、一般人なのに雑誌で特集が組まれ、写真集が出るほどの人気だった。それは結婚した今も健在で、女性客が多いらしい。むしろ、結婚した後は、客層が広がって、年配のファンも来るようになったという。
「よく俺が嫁に怒られている動画が流れていて、それが連載になっている」
「そんなに怒られているのか…………」
しかし、朽木も凄いが、幸助もかっこいい。二人は似ているが、別人で、違う魅力を持っている。幸助は、やんちゃな長男という雰囲気で、放っておくと、何をしでかすのか分からない。
朽木も何をしでかすのか分からない雰囲気はあるが、どちらかというと、密かに世界征服でもしていそうだ。
「なあ、佐久弥。ここに水瀬の店を出してさ……こっちで暮らさないか?それで、水瀬に女将代理をして貰って、リコは子供を育てる」
リコというのは、幸助の妻の事らしい。
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