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75.大きくなったら手が届く
手に刺さった光を心配して、メリクはずっと僕の手を握っている。でも本当に痛くないの。痛かったのはメリクの方だもん。
メリクから伝わってくる痛みがなくて、僕はほっとした。痛いのに慣れてるから、メリクが痛いなら僕が代わりになるよ。そう口にしたら、絶対にダメだと怖い顔をする。僕が痛いと心配だと伝わってきたから、頷いた。
僕も同じように思う。メリクが痛いのは嫌い。にゃーやルミエルが痛くても嫌だった。お風呂で確認したけど、手は綺麗だ。刺さった光の跡はなくて、精霊がいっぱい寄ってきた。皆、僕の手を撫でていくの。
痛くないのは、精霊のお陰かも。そう話したら、メリクは変な顔をしていた。もしかして、精霊が痛みを消してくれるって、知らないのかな。両手を使ってあれこれ説明したら、僕の髪を撫でて「よく知ってるな」と褒めてもらった。
次の日もお花を摘もうとしたけど、ルミエルが来るまで待つように言われた。昨日変な人が来たから? 首を傾げると、そうだと頷くメリク。心配だと言われたから、部屋の中で待っていた。
コンコンと扉から音がして、少しだけ開く。ちらっと顔を見せたのは、金色の髪のルミエルだった。
「あ、イルちゃん! 昨日は痛くなかった? 変なことされていないよね」
駆け寄るルミエルが、僕を抱きしめる。僕も手を目一杯伸ばした。メリクだと背中で届かないけど、ルミエルはあとちょっと。僕がもう少し大きくなったら届きそう。
「イルちゃんが大きくなる頃は、私も成長してるわよ」
「そうなの?」
じゃあ、ずっと届かないのかな。そんな僕に、ルミエルは笑った。
「大丈夫、いつか届くから。時間はいっぱいあるのよ」
時間がいっぱい……よく分からない。一緒にいる時間がいっぱいって意味かも。頷いた僕はお部屋にいるメリクに声をかけた。
「ルミエルと、おはな」
「ああ、気をつけて行ってこい。頼んだぞ、ルミエル」
「もちろんよ」
仲良く二人で手を繋ぐ。片手でお花を摘んで、ルミエルが持ってくれた。お家に戻るまでずっと、にゃーがついてくる。お部屋で皆一緒にご飯を食べた。
僕はメリクのお膝、隣にルミエル、にゃーも椅子に飛び乗ったの。用意されたご飯は、手で掴んで食べるパンだった。平べったくて、上にいろいろ載せるんだ。それを巻いてお口に入れるの。
大きな口を開けて食べる僕は、もぐもぐする間にメリクへ巻いたパンを差し出す。ルミエルは自分で巻いていたし、にゃーは巻かないでそのまま食べた。
野菜とお肉とタレが入ってる。たくさん食べたら大きくなれると聞いた。メリクが食べるのより細いけど、二つも食べたよ。早く大きくなって、ルミエルもにゃーもメリクも、僕が抱っこするんだからね!
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【私だけが知らない】
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていきます。
https://estar.jp/novels/26142215
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