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五藤が作る人形はみんな優しい丸顔で、確かに夏蓮に面影が似ている。
「師匠は女の子に甘いですよね」
「そうや、それの何がいかんとね。わしは優しくてかわいい女の子が大好きやけん、こげんたくさんのおなごさんに囲まれて幸せや」
五藤が自分が作った人形を見つめる視線は愛しさに満ちている。
「謙太郎が預かり笹と一緒に弁天様を連れてきたけん驚いたなあ」
「どこのお嬢さんを担いだかとびっくりしたわ」
「恵里菜さん、その担ぐってどういう意味なんですか」
「昔の風習で駆け落ちみたいな意味かしらね。謙太郎君は今どき珍しく硬派だと思ってたら案外やるわよね」
「転んでけがをしていたから、そのままにできなかっただけです」
「謙太郎君は、本当に女心に疎い!つまらないなあ」
「つまらないってどういう意味ですか」
むっとして言い返すと恵里菜は肩をすくめた。
「ごめん、悪かったわよ。言いすぎたわ」
つまらない、そのことばが耳の奥深くを突き刺し、ついかっとなってしまった。
謙太郎がかっとなった理由を恵里菜も知っているからすぐに謝ってくれたのだ。
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