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松囃子を先導する傘鉾がやって来た。
垂れには美しい絵が描かれていて、その下をくぐると子どもは病気にならないというので、「小さい子はくぐりんしゃい!」と赤ちゃんを抱いたお母さんや子どもたちを手招きしてはくぐらせていく。
そのとき突風が吹いて傘鉾の垂れがそばにいた女の子にまとわりついた。
もがけばもがくほどからまり、鉾を支えている男性が「誰か助けてくれ!」と叫んだ。
謙太郎は慌てて道路に出てスライディングキャッチの要領で垂れに絡まっている女の子の体を支えた。
「大丈夫?」
「あの、すみませんでしたっ」
謙太郎とおなじ年くらいの女の子だった。
転んだときにけがをしていて膝から血が出ている。
「けがをしているから手当をしたほうがいいよ」
「でも私、博多検番のお姉さんたちの付き人をしないといけないんです」
ブラウスにスカートという普段着で、色白の丸顔は、まるで師匠の五藤が作る人形みたいだった。
「工房はすぐ近くだから、手当てしたら追いつけるよ」
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