18人が本棚に入れています
本棚に追加
20230604
今日はバイトでした。
バイト先は一年の時からずっと同じで、通学途中の乗り換え駅から20分くらい歩いた所にある、カフェです。
メイドさんっぽいパフスリーブのミニスカートにフリフリエプロンの制服が可愛くて気に入ってるんですけど、友達には誰にも言ってないですね。
ちょっと女子女子し過ぎで、何か恥ずかしいし。
ま、多分店長の趣味なんだと思いますけど。
あ、店長って、あの店長です。
ちなみに個人経営の店なので、店員は私と店長だけ。
……そうなんです。
バイト中は店長と二人きりなんですよね。
それって、かなりマズイって私も分かってはいるんです。
だから去年の冬、彼氏が出来たタイミングで辞めようとしたんですけど、「次の子が見つかるまでは続けて欲しい」って、懇願されてしまって。
仕方がないので、今もいます。
でも、新しい人、いつまで経っても入ってこないんですよね。
なんとなくですけど、探す気無いんじゃないかなと思っています。
って、話が長くなってしまいましたが……。
いつもはランチまでなんですけど、今日はラストまで居たので、ヘトヘト。
着替えた後、ぼんやりしていたら、店長が
「送っていくよ、どうせ同じ方向だし」
って言ってくれて。
断ろうかなとも思ったのですが、今から駅まで歩くのを考えたら、もうしんどくて。
「お願いします」
って言うと、
「店を閉めてくるから、暫く車の中で待ってて」
と、鍵を渡されました。
以前、私があげた、ご当地キャラのキーホルダーが付いていて、まだ捨ててなかったんだと、変な気分になりました。
駐車場の隅に停まっている店長の車。
また乗るなんて、思いもよらなかったけど。
助手席に座ってドアを閉めたら、以前と同じルームフレグランスの香りがして、それと一緒に去年の夏の高揚感が蘇ってきました。
息をする度にお腹の奥が熱くなって、胸の先端が期待に満ちてきているのを感じずにはいられません。
したい。
正直、そう思いました。
でも、流石にそんな訳にはいきません。
私は口の中を噛み締め、何とか熱をやり過ごしました。
暫くして、店長が来ました。
「お待たせ。じゃあ、行こうか」
「はい」
ハンドルを握る店長をまじまじと見てしまいました。
分厚い唇にしゃくれて割れた顎、大きな鼻、細い目。
ハンドルを握る、太くて毛むくじゃらの指。
はっきり言って、キモいです。
でも、この不器用そうな指で体中を弄られたい。
分厚い唇を私の恥ずかしい色んな所に押し当てて欲しい。
もう、気が狂いそうなくらい、店長を欲していました。
でも……。
私には今、大切な彼氏がいます。
だから、一時の欲望に流される訳にはいかないんです。
家に着くまでの小一時間。
私は色を滲ませないよう、細心の注意を払い、店長と当たり障りのない会話を続けました。
そして、いつも迎えに来て貰っていた公民館の前に着きました。
何とか無事に帰れた。
私は心底ホッとしました。
「ありがとうございました」
車を降りようと、ドアに手を掛けると、
「ねぇ」
と、いきなり右手を掴まれました。
「な、何ですか」
「車に乗ってる間、ずっと欲しそうな顔してた」
そのまま腕を引っ張られ、抱きすくめられてしまいました。
「ちがっ。止めて。止めてください」
精一杯の抵抗を試みるものの、店長の体臭に私の脳は既にバグってしまっていました。
「いいよ、あげる。欲しい物、俺が全部あげる」
「いや、な、何言ってるんですかっ……んゅ」
欲しくて欲しくて堪らなかった、気持ち悪い唇を押し当てられ、口の中を舌で弄られ……。
結局、私は店長に籠絡されてしまいました。
何度も啼かされた後、意識朦朧としている私の身体を、店長はウエットティッシュで丁寧に拭ってくれました。
「また、いつでも抱いてあげる」
その言葉を無視して、私は乱れた着衣を掻き直し、車を降りました。
公民館から家まで歩いている間に、彼氏から着信があったけど、もう返事なんて出来ないくらい疲れていて、無視してしまいました。
そして、家に帰って速攻、誰とも口を利かずに、着ていたものを洗濯機に放り込み、お風呂に飛び込みました。
もう、私、最低。
色々最低。
あまりの罪悪感に私は湯船に浸かって泣き続けました。
最初のコメントを投稿しよう!