モブ女、涼花(すずか)の日常

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「っていうかさ、もうちょっとイケメンとの妄想にしなよ。例えば同クラの佐藤くんとかさ」  「佐藤くん!?」 「そ、佐藤くんに図書館の奥で押し倒されて……ひゃん♥みたいなの、書いてよ」 ……佐藤くんというのは、ウチのクラスで人気ナンバーワンのイケメンだ。 しかも、頭も良くて、運動神経バツグン。性格も良いという、ドラゑもんでいう、出木杉くんキャラ。 そんな佐藤くんとなんて……。 「無理無理。 私のようなモブが想像でもおこがましい」 ブンブン首を振って否定すると、美桜(みお)はちょっと考えて、にまぁと笑った。 「じゃあさぁ、佐藤くんと誰かがエッチしてる現場を偶然見掛けちゃうとかは? 涼花(すずか)はさ、変態だから、ショック受けつつも、盛っちゃってその場でひとりエッチ始めちゃうワケ。 で、それをキモいおっさんに見つけられて、レイプされちゃうとかは?」 「えぇ! ヤダよ。なんで妄想なのに、佐藤くんのそんなシーン見てショック受けて、更にレイプまでされないとダメなのさ」 私は和姦モノが好きだ。店長との件も、結局自分がしたいって妄想だからたぎるのだ。 レイプなんて、辛そうだし、絶対ヤダ。 って、あれ? 私ってドMだと思ってたけど、そうでもない? 自分で自分が分からなくなってぐるぐるしちゃう。 そんな私の葛藤など気にも留めず、美桜(みお)はにやにやと答えた。 「私が、佐藤くんのエロいとこを妄想したいからに決まってんじゃん。読者のニーズに応えるのが、作家ってもんでしょ?」 作家!? 「いやいや、作家じゃねぇし!」 びっくりして否定する私に美桜(みお)はビシッと人差し指を差して言った。 「とにかく! お題は佐藤くん。頼んだよ」 「マジか」 そして、くるりと背を向け、歩き出す。 私は美桜(みお)の背中を追い掛けながら、心の中で呟いた。 佐藤くんでエロい妄想。 尊くて拝むのは簡単だけど、エロい妄想。 うーむ……。 出来るのか、私……。
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