第二章 不釣り合い

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砂利の音で目が覚めた。 タイヤに絡む独特な家の前に着いた時の不快な感じ。 「有希ちゃん、着いたよ」 「ぁ…うん!ありがとう!ごめん!走り出したのも知らなかった」 「ボーカルは体が楽器だから。疲れたでしょ。ゆっくり休んで」 私はハンドルに頭を寝かし、こっちを見るアッキーと別れるのが嫌だと思った。 グッと唇を噛んだ。 「ぁ…アッキーは帰ったら寝る?」 「ん〜、どうかな?チビ達が起きてるだろうから、初詣とか連れて行くかも」 そのセリフで、私は噛み締めていた唇から一気に力が抜けた。 「そっか…頑張んなきゃね!パパ!」 私に魔法はかかっていない。ちゃんと、悪の巣窟に送り届けられたし、アッキーとほぼまる1日一緒に居たからといって、まだ一緒に居るなんて叶うわけじゃない。別れたくないという思いは無理もない。優しくされ、怒鳴り声もせず、楽しい空間を共にしていたのだから。ただそれだけの事で、危うく迷惑をかけるところだった。 車から降りて手をふる。 アッキーの車は遠く小さくなる。 私は一気に無気力になる。肩に鉛を担いだように体が重い。 玄関に手を掛け息を吸う。 さぁ、覚悟なさい。 ここが私の居場所なのだから。 家の中は静かだった。父はパチンコに出かけたようだ。恵理の部屋の扉を開く。 ベッドで寝転んでいる恵理はゆっくり目だけで私を見上げ、「おかえり」と呟いた。 「ただいま…何もなかった?大丈夫?」 「あぁ…うん、別に何にもなかったよ。珍しくね」 家だというのに、私たちはいつも緊張していた。 私が居ないこの家で過ごす事は、きっと相当に精神をすり減らす。 分かっていても、やめられない。 恵理、ごめんね、と思いながら、私は部屋を出た。
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