大和川決壊未遂

5/5
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
夫による妻殺害。逆に、妻が夫に熱湯をかけて殺すとか、殴り殺すとかいう恐るべき事件もある。妻はバレーボールのサークルに入っておりいかにも腕力がありそうだ。そのためおれは寝室に鍵をかけ寝床に金属バットを置いているが、実際おれには彼らのように大それたことをする勇気はない。 罪を犯せばたいがいバレるものだし、刑務所は防寒対策ができなさすぎて辛すぎるとホリエモンが著書で言っていた。寒いのが苦手なおれは刑務所に入るのは絶対に嫌だ。 洪水警報が出ている今にいたるまで妻からの連絡はない。もしかして避難所に行ったのか? それなら家が流されても妻は助かってしまう。激安だったのだ。きっと基礎も適当で、浸水したら簡単に流れてくれるだろう。補償金を受け取り、悠々自適なおひとりさま後半生ライフのおれの計画も流れてしまう。畜生。 家にいるのか? 電話したところ、妻が出た。 「なんや、まだ家にいるんか」 「まあ、いつものことやし、大丈夫やろ。それよりあんた、帰れるん? 豚まん食べたいわ、買うてきてよ」 電話を切り、ニュースを見ているうちにビールがいい感じで回ってきて、眠ってしまった。目を覚ますと明け方で、雨はすっかりあがっていた。大和川の洪水警報も解除されていた。なんばウォークの551蓬莱で豚まんを飼い、おれは近鉄で家へ帰った。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!