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おれにも医者に診て貰いたいという妻の要望を、おれは拒否した。アレを採って、顕微鏡で見られるんだろう。絶対にいやだ。おれは子供は好きではない。いなくても別にいいではないか。
この言葉に傷ついたのか、それから妻の態度は目に見えて冷たくなっていった。
「休みだからって寝てばかりいないで、庭の草引きくらいしてよ!」「自治会の集会、たまにはあんたが行ってよ!」「河川掃除、たまにはあんたが行ってよ!」「ゴミ出しくらいしてよ!」「1回くらいごはん作ってみてよ!」「パックのまま総菜出したくらいで文句言わんといて!」「(繁忙期に日付を超えて帰宅した時)何時やと思ってんねん! あんたの会社はブラック企業か!?」……
だあ~~~~~っ! うるせぇ! クソがっ!
おれは毎日、わがままなクライアントの無茶な要望に応え、わがままな部下に物わかりのよい面倒見のよい上司を演じながら、必死に働いとんじゃ!
休みくらい好きにさせろや!
顔を合わせると文句ばかりでうんざりするので、ここ数年まともに会話していない。何か言われても相手をしたくないので「ああ、うう」と生返事か、無視するだけだ。
この先どちらかが死ぬまで何十年も一緒なのか。ぞっとする。半年前、ついに離婚を切り出したが、冗談と勘違いしたらしく鼻で笑われ、それきりになっている。
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