大和川決壊未遂

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6月2日金曜午後3時。大阪市中央区のビジネスホテルの一室でおれは缶ビールを飲みながら、台風2号に伴う大雨により今にも決壊しそうな激流の大和川のニュース映像を見ていた。 「雨よ、降れ。もっと降れ!」 出社してわずか2時間。洪水警報が出された地域の者は帰宅するようにとの御達しが出たため、退社した。いつも思うのだが、出社してから言われたって、帰る途中で電車が止まったり、洪水に巻き込まれたらどうしようもないではないか。最初から休ませろよ。てか、このご時世なんだからさっさとテレワーク導入しろ。そうしないのはPCのリース費用をケチりたいからだと会社の皆は言っていて、それは当たっているのだった。 ツイッターで「近鉄 大和川」を検索し、近鉄南大阪線の動画を見る。ヘタレのJRが早々に運休を決めたのに対し、同じ大和川の上を走る近鉄はこの大雨の中、通常運転だ。増水した川の水面すれすれを、いつもの速度で走っている。 災害が起こった時、他の電鉄が止まっても、たいがい近鉄だけは動いている。阪神大震災の当日もJRはすぐ止まったが、近鉄は終点の大阪上本町まできっちり走っていた。 いいぞ、近鉄! なんとしてもお客様を目的地まで運ぼうとするプロ根性におれは痺れるぞ! ……いや、単に商魂たくましいだけか。さいきん近鉄グループの近畿日本ツーリストの不祥事(自治体から受託した新型コロナウイルス対策事業で最大16億円を過大請求した問題)があって、イメージ悪ぅ~挽回せな~と思っているのかもしれない。
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