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父と親しくしていた人達は、自分も疑いを掛けられるのを恐れて取り合ってくれなかった。父への疑いを鵜呑みにして、ヒカリのことも犯罪者扱いする人間もいる。
「みんな王が正しいと言ってる。国家を脅かす危険因子を排除しただけだと」
悔しさと、悲しさで涙が止まらなくなる。父は殺される理由なんて何もなかった。濡れ衣だったのに。
「誰も王を裁けないのなら、俺が父さんの恨みを晴らす。命に代えても」
それがどれだけ無謀なことかはわかっている。だけどヒカリはどうしてもあんな非道な命を出した王が赦せなかった。何か行動を起こさずにはいられない。
「事情は理解した。が、どんな強い感情を抱いていようとお前には王を殺せない。近付くことすらできないまま捕らえられて死刑だ」
断言され、ヒカリは鋭く息を吸い込んだ。
「先程も言ったが、お前が騒ぎを起こすことで今後の仕事に支障をきたす」
バドルは静かにそう言った。
「お前がしようとしているのは復讐行為ではなく自殺行為だ。お前が捕らわれようが罰せられようが興味はないが、死にたいだけなら他でやってもらえるとありがたい」
その言葉の鋭さに衝撃を受けてヒカリは目を見開く。そんなヒカリの反応に気付き、バドルは溜息を吐いた。
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