151人が本棚に入れています
本棚に追加
/95ページ
「勝手なこと言うなよ! あんたに何がわかるんだ」
向けられた言葉が、躊躇なく突きつけられた事実が悔しくて涙が溢れた。
「助けてくれなんて頼んでないのに、勝手に俺を連れ出したのはあんただ! せっかく侵入できたのに、あんたが邪魔したんだ!」
頬に雫が伝う。バドルに泣き顔を見られたくなくて、ヒカリは焦ったようにそれを拭う。
「あんたが俺の事情に興味がないのとおんなじで、俺だってあんたの仕事の都合なんて知らない」
今度はヒカリが男に背を向けて歩きだした。
「どこへ行く」
今来た道を戻っていくヒカリにバドルが声を掛ける。しかしヒカリは答えない。
「おい、待て」
追いかけてきたバドルがヒカリの腕を掴む。
「離せよ」
その手を振り払って振り向き、まるでバドルこそが父の仇であるように、ヒカリは睨みつけた。強い眼差しを受け、バドルが諦めたような溜息を吐いた。
最初のコメントを投稿しよう!