第2話

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 でも、一体誰が?  思考を巡らせて、ヒカリはある可能性に辿りついた。いや、それ以外に考えられない。恐らく、村の誰かが置いたのだ。家族を喪くしたヒカリを哀れんでのことかもしれない。保身の為に父親の件を取り合わなかったことに対する罪滅ぼしなのかもしれない。こんなもので父に対する裏切りが赦されるとでも思っているのだろうか。 「……くそっ」  持て余す程の怒りが湧いてきて、ヒカリは手の中の果実を壁に向かって投げつけた。ぐちゃぐちゃに潰れた黄色い身が、甘い匂いを放ちながら床に落ちていく。 『しっかり食事をとって心を休めろ。そこから見えてくるものもあるだろう』  ふとバドルの言葉がよみがえった。  本当はわかっている。自分が現状から逃げていることを。それでもこの行き場のない気持ちをどうやり過ごせばいいのか、ヒカリにはわからなかった。
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