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「ほら、まだ充分温かい」
差し出されて受け取りはしたが、ヒカリはそれに口を付けず凝視した。
「なにこれ……」
「なんだ。コーヒーも知らんのか?」
揶揄うような言葉にヒカリはむっとした。
「そういう意味じゃない。なんでこんなの……」
バドルは答えず、更に麻袋から食べ物を取り出す。
「俺の夜食だ。食え」
「なにそれ、そんなのいらない」
差し出された紙包みを、ヒカリは押し返す。けれどバドルは引き下がらない。
「言った筈だ、俺に従えと」
バドルの声が僅かに低くなり、重さを増す。
「空腹では頭も回らんだろう。その痩けた頬を治さんことには目的遂行は程遠い。俺は可能性のない者に知識を授ける無駄骨は御免だぞ」
バドルは有無を言わせず、ヒカリの膝の上に包を置いた。「冷めるぞ」と声を掛けられ、ヒカリは渋々カップに口をつけた。
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