第2話

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「呼ぶ時に『お前』では味気ないだろう」  それでもヒカリはなかなか口を開かなかった。今までの人生で、人に名乗っていい思いをしたことがないからだ。 「……ヒカリ」  嫌々伝えると、バドルは不思議そうな顔をした。 「変わった名前だな」  バドルの反応はヒカリの予想の範囲内だった。ヒカリの母はこの国の出身ではない。名前は母の母国語からつけられた。 「もしかして日本語か?」  バドルの問いに、ヒカリは目を見開いた。その表情のまま、こくこくと首を振る。 「バドルは日本語がわかるの?」 「ああ、少しだけな。実際に行ったこともある」 「本当に!?」  勢いよく食いつくヒカリにバドルは苦笑をこぼした。 「知人の仕事を手伝って二度程な」 「どんなところだった?」 「そうだな……。いいところだった。日本にはこの国と違って、はっきりと四季がある。俺が行ったのは春と冬だ」 「雪は? 雪は降ってた?」  興奮状態のヒカリに、バドルは「少し落ち着け」とその背を軽く叩いた。 「雪は少しだが降っていたな」  レムーダでは雨さえ殆ど降ることがない。国民たちは雪に対して憧れのような感情を少なからず持っていた。
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