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三日後に待ち合わせの場所へ行くと、バドルは途端に険しい表情をした。
「おい、なんだその顔色は」
ヒカリの頤を掴み、月明かりに晒すように顔を上へ向かせる。血の気のない顔。削げた頬。
「俺の話を聞いていたか? これじゃあ計画どころの話じゃない」
顔色を確かめてから、バドルはヒカリを解放した。
「何故食事をとらない」
「何故って、食べるものがないからだ」
端的に答えると、バドルは訝しげに眉根を寄せた。
「父さんが死んだ今、うちの収入はゼロだ。俺が働こうにも牧場は燃やされてなくなった。稼ぎがなければ何も食べられない。当たり前のことだ」
するとバドルは、怪訝な顔をした。
「どうした、何かあったのか?」
ヒカリはその質問の意味がわからなかった。『何か』ならとっくに起こった。だから自分はここにいる。その為だけにここにいるのだ。
「もういいだろ、どうでも。計画遂行には支障ない。それでもし失敗してもバドルには関係ない」
「ヒカリ」
紡がれる自分の名前に、胸の奥がほんの少しだけ疼いた。その声色に労りを感じたからだ。バドルは本気で自分を心配してくれているのかもしれない。心が揺れ掛けて、それでもすぐにすっと冷えて固まる。
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