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バドルはヒカリの顔を凝視して、やがて諦めたように瞼を閉じた。
「わかった。それじゃあ計画の具体的な話をしよう」
再び目を開けたバドルの顔からは表情が消えていた。
「一度目のように上手く宮殿内に侵入できたとする。けれどその先は? ヒカリが考えていたように王の寝室まで潜入して寝首を掻く、これはまず間違いなく不可能だ。たとえ経路を把握していたとしてもだ」
ヒカリは黙ったままバドルの話を聞いた。
「王の寝室周辺は警備が強固過ぎる。訓練された暗殺者でもない限り近付くことすら無理だな」
表情を曇らせるヒカリに、バドルは言葉を重ねた。
「ヒカリは銃が扱えるか?」
無言のまま首を横に振ると、「まあ当然だな」と返ってくる。
「そうなると実行できる可能性があるのは、できる限り近付いて爆発物を仕掛ける。しかし確実に仕留める為の規模なら、周囲の人間を巻き込むことになるな」
「っ、それは……」
王の命を奪うことができるのなら、もうなんだっていいと思っていた。すべてが終わるのだ。だけど無関係の人を巻き込むことは即ち、ヒカリのような人間をつくってしまうということだ。理由もないのに大切な人を奪われた絶望感を、他の人間に味わわせるということだ。それだけはしたくない。暗い顔で小さく首を振ると、バドルは短く息を吐いて表情を崩した。まるでヒカリの答えが端からわかっていたという態度だ。
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