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「ヒカリは優しい子だな」
褒めるように頭を撫でられて、ぎくりと体を強張らせた。固まった心が軋む音が聞こえる。
「あとはそうだな……毒殺という手段もある」
物騒な響きに、ヒカリはぎこちなくバドルの顔を見上げる。
「しかしこれも簡単に仕組めるものではない。調査を重ねて綿密に計画を練る必要がある」
淡々と告げるバドルを、ヒカリはただ眺めていた。
「さて、今日は取りあえずここまでにしておくか」
「……もう? まだ全然決まってない」
不満気に呟くと、バドルは笑みを返した。
「急いては事を仕損ずる。日本の言葉にあるだろう? 焦らず時機を待て」
そんな言葉まで知っているのかと、ヒカリは感心した。自分に向けられたバドルの笑顔は柔らかいものに見える。わざわざ日本の言葉を持ち出したのも、ヒカリが喜ぶと考えてのことだろう。バドルはやはり優しい人間なのかもしれない。
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