第2話

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 地表が日中に溜め込んだ熱を、訪れた闇がどんどん奪っていく。 ヒカリは日没と共に家を出て都心部を目指した。時間を追うごとに人の姿がまばらになっていく。町中は家々から漏れる明かりで視界はきくが、そこから外れてしまえば薄暗く、ランプなしには歩くことができない。  資源豊富なレムーダは、小規模ながら相当な経済力を持つ国家だ。それなのに先進国の雰囲気はまったくない。都心へ行けばそれなりに近代的な建造物も存在するが、ビルはないし、鉄道も敷かれていない。ここ数年で自動車を見掛けるようになったが、未だに国民の半分以上が移動は徒歩かラクダを使用する。  数年前、父に連れられて一度だけ隣国のカイサルを訪れた時、ヒカリは大層驚いたものだ。ずっと遠くには何本も高い建物が見え、街は夜でも電灯が煌々と照らされていた。清潔感溢れる無機質な建物や電化製品。商店を覗けば、海を超えた向こうからやってきた珍しい食べ物や雑貨が並ぶ。それらはヒカリの心を高揚させたが、今の生活を変えてまで手に入れたいとは思わなかった。
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