第2話

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 それは偏に、レムーダが自然との調和を第一に、昔のままの姿を大切にしているからだ。太陽と共に起き出し、それが沈めば町も村も眠りにつく。静かになった一帯を幾千の星と月が見守る。絆と伝統を重んじ、自然に感謝し、日々を生きる。国民はそんな生活にこそ美徳を感じ、国王もまたその意思を尊重した。  もちろん昔と変わったものもたくさんあるが、それは他国に比べると、随分緩やかな変化だった。  先代の国王は学校制度やその設備に力を入れた。二年前に新たな王となった第二王子は、医療機関の充実に注力している。お陰で今では、都心に行けば世界でも屈指の最先端医療を受けることが可能だ。医療技術者の育成にも熱心であった。  二十六歳の若き王は、国民に愛され敬われた先代の王の遺志をしっかりと受け継ぎ、先代に匹敵する、あるいはそれ以上の器を持っていると評判の英君だ。その命を奪う。それが一体どういうことなのか、改めて考えてみる。そもそも、自分が人一人の命を奪うということ。その重さは想像しただけで押し潰されそうだった。  民に愛され、また同じように民を大切にしていた筈の王が、どうして今回のような非道な命令を出したのだろう。ヒカリには理解できなかった。
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