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ヒカリがそんな風に冷静に状況を考えるようになったのは、バドルが自分に向ける、柔らかく温かい感情に気付いたからだ。
憎しみの炎が消えた訳じゃない。それは今も内側からヒカリを焼き切ってしまいそうな程に燃え盛っている。孤独感も絶望感も自らを食い尽くしそうなくらい胸の中で広がっている。自分はそれから逃れる為に、復讐という凶行に走っているのだろうか。
眠りにつき始めた町を抜け、人気のない森へと踏み入る。ヒカリの足は、少し緊張していた。怖くもあった。
バドルに期待しているからだ。信じてみたいと願う自分を抑えきれない。自分に対する優しさが本物であって欲しい。もしもそれが裏切られたら、今度はもう立ち上がれない。
いつもの場所へ行くと、バドルが待っていた。胸が騒いで落ち着かず、ヒカリは膝を抱えて小さく縮こまった。
その日、バドルはたくさんの果物を持ってきた。食べ切れない分は持って帰れと、袋ごとヒカリの前に置く。しかしヒカリはそれに手を伸ばさなかった。代わりに硬い声でバドルに質問を投げ掛けた。
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