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「ねえ、毒薬ってどこにいけば手に入る?」
バドルは驚いたように息を詰まらせ、ヒカリを凝視した。
「早く終わらせたいんだ」
バドルの顔を見ないままヒカリは続けた。
「……ヒカリ」
バドルは困惑したような声でヒカリの名を呼ぶ。ぎこちない仕草で横を向き、ヒカリはバドルの表情を確かめた。戸惑ったような、悲しそうな顔。その瞬間、ヒカリの中で甘く、熱い感情が一気に広がる。やはり自分の思っていた通りだと確信した。
「バドルは俺に暗殺を成功させたいの? それとも、やめさせたいの?」
それでもまだ不安で、頼りない声で問い掛ける。バドルは数秒間ヒカリを見つめたあと、観念したように長い息を吐きだした。
「俺はお前に、……生きて欲しい」
真摯な眼差しがヒカリを見据える。祈るような声に体が、心が震えた。
「お前の父上は無念だったろう。きっとお前の成長を願い、将来を見届けるのを楽しみにしていた」
バドルがゆっくりと手を伸ばす。そっと頬に触れた指先を、ヒカリは拒まなかった。
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