第2話

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「復讐なんて望んでいない。ヒカリに生きて欲しいと願っている筈だ」  バドルは身を寄せると、ヒカリを抱き締めた。 「俺も願っている……心から」 バドルから放たれる伽羅の香りが、ヒカリの心を解いていく。逞しい胸の感触と腕の力強さが安寧を与えてくれる。  ヒカリは少し躊躇いながら、おずおずとバドルの背に腕を回した。甘えるように胸に額を擦り付けると、それに応えるように更にきつく抱き締められた。孤独も絶望もその瞬間だけは忘れてしまいそうになるくらい、満たされていた。 「バドルはどうして、俺に優しくしてくれるんだ?」  バドルにとってヒカリは、なんの義理もない子供だ。 「……そうだな、最初はただ放っておけなかった。復讐心に捕らわれたお前をなんとかしてやりたかった」  バドルはヒカリの肩を掴み、やんわりと体を離す。 「でも今は、それだけじゃない。絶望に落ちても尚、素直で優しい部分を失わないヒカリの健気さに胸を打たれた」  青い目がまっすぐにヒカリを見る。 「日本の話をすると瞳を輝かせるお前が可愛かった。その綺麗な瞳を……ずっと眺めていたかった」  真摯な言葉に体の内側から何かが溢れてくる。その正体がわからない。ただ体が熱くて、自分の意思とは関係なしに瞳が潤んでいく。
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